「プロテクト」(工芸高校)

工芸高校さんの「プロテクト」を観劇させていただきました。

まず、登場人物全員が白い服を着ていて、部屋には窓のようなものがあるけど封鎖されているようで、ここはどこなんだろう?と冒頭から色々と想像が膨らむセットでした。

「ここの部屋って鍵かかってなかったっけ?」「私たちはこうしてお喋りしてるだけでいい」などのセリフ、時報が知らせてくれるのは深夜の時間帯ということなどから、もしかしてここはチャットルーム…?じゃあこの4人はどういう関係なんだろう?と飽きない展開で面白かったです。

守られたチャットルームの中にいた4人が、ただ怖がって弱いままでいるだけではダメだと決意し外の世界に出て生きようとする姿は、小鳥遊さんが五十嵐さんの背中を押したように、観ている私自身も励まされたような気持ちになりました。

小鳥遊さんのセリフで1番印象に残っているのは、「一歩踏み出した先は、 前よりも苦痛で、自由じゃないかもしれないけど、でもそれだけではない」というセリフでした。生きることって難しいけどそれ以上にいろんな価値があるんだ、ということを改めて知ることができました。

4人が自殺を図ろうとするも、なぜか夜景をみて死にたくなくなったように、私たちが生きようとするきっかけは些細なものかもしれないと思いました。五十嵐さんが「日の出をみて、なにか美味しいものでも食べに行こう」と言ったあとのみなさんの晴れやかな表情は、前向きになれるもので、とても感動的でした。

そして、チャットルームに人がいなくなったシーンの音響がとても良かったです。4人がこうして集まることは無いかもしれないけど、これから4人は頑張っていくんだ、それは悲しいことではないんだとより思わせてくれるような音でした。

場面が変わる度に切り替わる照明も本当に綺麗で、1人ずつ、「チャットルームに現在人はいません」と言っていくシーンは、4人の顔は見えないけれど、そこに存在していることは確かで、少しだけさしこんでいる光は、絶望の中にみえる、ほんの少しの希望のように思えました。

工芸高校のみなさん、お疲れ様でした。

清風南海高校2年 卜部花音